Yoshikazu Suzuki --> Ph.D student, School of Journalism and Mass Communication, University of Minnesota. Research interest: social media marketing, commons-based peer production. More about me: http://bit.ly/suzuk040
---------------------------------------------
鈴木 良和。ミネソタ大学大学院ジャーナリズム・マスコミュニケーション校の博士学生。研究テーマはソーシャルメディアマーケティングとピアプロダクション。どちらかというと個人的メモな、ネタ・アイデアブログです。
Search
Genki Sudo/WORLD ORDER "2012"
ユーザー参加型メディアとギフト・エコノミー
とあるところに寄稿した記事なんですが、ボツったのでこっちに掲載w
(1)最近のインターネットとギフト・エコノミー
ソーシャルメディアなどのユーザー参加型メディアが広がりを見せる昨今、 Web 2.0 以降のインターネットは、一度は失われていた「人間味」が増したように感じられます。パソコン通信やインターネット黎明期には、「ネチケット」というユーザー同士の一種の思いやりがありましたが、その後それは死語となってしまいました。と同時に、以前はネットワーク上のノードが「情報」の単位だった事に比べ、現在のインターネットは人と人との繋がり(ソーシャルネットワーク)が占めている部分が飛躍的に大きくなりました。 そんな中、ネット上では様々なサービスが「シェア(=共有)」という機能を採用しています。シェア(=共有)とは、自分の持っている物(情報、データ、物資、等)を誰かに分け与える、という意味です。 一般的にシェアがよく見られるのは、好きな動画やブログ記事を知り合いに教えたりする場合ですが、このユーザー参加行為は、ソーシャルメディアや参加型メディアを根本から支えるとてもクリティカルなものです。 私たちが日々ネットで出会うコンテンツの大部分は、ユーザーからの提供に依存しています。例えば、誰もプロフィールを作らなかったり書き込みを行わないmixi絶対につまらないだろうし、Facebookのコンテンツは(ソーシャルゲームなどを除いて)全てユーザーが能動的に提供する個人情報ですし、ウィキペディア、製品レビュー、クラウドソーシングやオープンソースプロジェクトなどもユーザーが情報や知識を提供しなければ成立しません。 このような、ユーザーの能動的「参加」を「ギフト・ギビング」(贈り物;情報や物資を提供する行為)として理解し、それを中心にコミュニティーが成り立つ仕組みが「ギフト・エコノミー」と呼ばれています。 (2)ギフト・エコノミーとは? そもそもギフト・エコノミーは、その名前とは裏腹に、厳密に言うと経済学とは全く関係のないものです。 ギフト・エコノミーを最初にアカデミアに広めたのは、人類学者ブロニスワ=マリノフスキとマルセル=モースです。マリノフスキとモースは、別々の研究で行った赤道近くの先住民族のフィールドワークを通じ、機能的物々交換とは本質的に異なる極めて形式的・儀式的な贈り物の交換が、コミュニティーの形成と持続を円滑化させている事を発見しました (Malinowski, 1922; Mauss, 1925)。 この発見は、後に消費者行動学者達によって理論枠組みとして応用され、「贈り物を贈る」という消費行動の分析に利用されました。例えば、Fisher and Arnold (1990)はアメリカで毎年盛んに行われるクリスマス・ショッピングを定性的に研究し、ジェンダーアイデンティティーがクリスマスギフトの消費行動を大きく左右する事が発見されました。まだ、Saad and Gill (2003)は贈り物を贈る行為の男女差を定量的に分析し、男性は贈り物をより策略的に利用し、そして交際相手への贈り物により多くのお金をかける事を発見しました。 さらに興味深い事に、ギフト・エコノミーはオンラインコミュニティーの研究にも応用されています。例えば、Bergquist and Ljuengberg (2001)はオープンソースソフトウェア開発をしているコミュニティーを研究し、プログラムコードの提供を中心にギフト・エコノミーが形成されている事を発見しました。「コードの提供」という贈呈の行為自体が、オープンソースコミュニティー内のノルマやカルチャーを影響していたのです。 また、最近の研究では、Giesler (2006)がP2Pファイル共有(Napster)の定性的研究を行い、音楽ファイル共有のP2Pネットワークがギフト・エコノミーによって形成されている事を発見しました。Giesler (2006)はP2P音楽共有に参加しているユーザー達へのインタビューを通じて、オンライン ギフト・エコノミーは以下の三つの要素によって構成されていると結論付けました:
1. Social distinction(参加者が感じる特殊性。または、ギフトを交換する者同士の特殊な関係) 2. Norm of Reciprocity(互恵のノルマ。 何かをもらったら返さなければならないという思考) 3. Rituals and symbolism(当事者同士のみに共通し、ギフト交換の体験を形付ける儀式・形式)
Giesler (2006)の場合、参加者同士の特殊性は「音楽へのアクセスはフリーで隔たりないものであるべきだ」という思考と、大手レコードレーベルへの反覇権的イデオロギーの共有でした。また、互恵のノルマは「音楽ファイルをダウンロードするだけではなくアップロードもするべき」というアクティブユーザー同士の暗黙のエチケットに現れていました。そして特筆するべき儀式・形式として、アクティブな貢献者(アップローダー)としてのレピュテーション(名声・評判)の重要性がありました。
参考文献
- Bergquist, M., & Ljungberg, J. (2001). The power of gifts: organizing social relationships in open source communities. Information Systems Journal. 11. 305-320.
- Fischer, E., & Arnold, S. J. (1990). More Than a Labor of Love: Gender Roles and Christmas Gift Shopping. The Journal of Consumer Research, 17(3), 333-345.
- Giesler, M. (2006). Consumer Gift Systems. Journal of Consumer Research, 33, 283-290.
- Malinowski, B. (1922). Argonauts of the Western Pacific. New York, NY: Dutton.
- Mauss, M. (1925). The Gift: Forms and Functions of Exchange in Archaic Societies, New York, NY: Norton.
- Saad, G., & Gill, T. (2003). An Evolutionary Psychology Perspective on Gift Giving among Young Adults, Psychology & Marketing, 20(9): 765–784.
[i] サンプリング形式はコンビニエンスサンプリングでしたが、定性的研究なので問題はないと考えます。ただ、人数がまだ6人と少数で、サチュレーションに達したかが不明なので、引き続きインタビューを続ける必要性があります。


